⽵内紙器製作所 専務取締役の堀⽊淳⼀さんにインタビュー③
箱作りのお仕事をする前に、役者をされていた堀⽊さん。今の考え⽅の原点となる役者時代のお話を聞かせてくださいました。
●アメリカへの旅
⾼校⽣のときに⼤学に⾏っても意味がないと思っていました。役者をやりたかったのです。⾼校を卒業した次の年、1ヶ⽉アメリカに⾏き19 歳の誕⽣⽇はロスで過ごしました。
⾼校⽣のときにバイトしていたピザ屋の仲間でアメリカに⾏っていた⼈がいたので、その⼈を頼ってまずシカゴに⾏きました。シカゴからロサンゼルス、またシカゴに戻ってニューヨークに⾏くという1ヶ⽉間でした。ロサンゼルスはロサンゼルス暴動の後で、昼でも本当に怖かったです。ロサンゼルスのハリウッドを訪れ、ニューヨークではブルーマンというパフォーマンス集団を⾒ました。
●「THE WINDS OF GOD」との出会い
旅から帰ってきて、最初に東映の養成所に通いました。⾃分は松⽥優作が好きだったのですが、その養成所は⾃分が思い描いていたアングラな世界観とは程遠いものでした。
ある⽇、そこで仲良くなった2つ上の先輩が今井雅之さんの書いた特攻隊の話「THE WINDS OF GOD」という舞台のニューヨーク公演のオーディションがあると教えてくれました。UPS ACADEMY(アップスアカデミー)という事務所がオーディションを⾏っていました。1次は受かり、その先輩とも⼀緒になって2次を受けました。2次にも受かりましたが、3次のオーディションでは何もせずに落ちました。3次は何も指⽰がないというオーディションだったのです。
●演劇の⽇々
アップスアカデミーは、メソッドという演技法を⽇本で実践しているところでした。メソッドはアメリカのアクターズスタジオという養成所が確⽴した演技法・演劇理論です。
かつて⾃分の演劇を⾒にきてくれた友達が「メソッドへの道」という本をくれたことがありました。それを読んでいたら⾃分が感じていたことと同じことが書いてあり、この⽅法をやってみたいと思っていたのです。
セミナー案内をもらい、アップスアカデミー主宰の奈良橋陽⼦さんのクラスを探しました。陽⼦さんは中級のみの担当でしたが、急遽陽⼦さんが初級クラスを持つことになったため初めての⾃分も受けることができました。数年、アップスアカデミーに仮所属していました。20、21歳くらいの話です。Vシネマやドラマの現場に⾏きましたが、やっぱりなんか違うなって感じていました。
●映画に打ち込む毎⽇
アップスアカデミーはアクターズスタジオの姉妹校でした。年に⼀度アクターズスタジオ
から⼈が来てくれてレクチャーをしてくれます。
フランク・カサロさんが来るタイミングで、ウインズオブゴッドの次のアメリカ公演のオ
ーディションがありました。
しかし、他のいくつかの撮影現場を経験して違和感を感じどうしても拭うことが出来ませんでした。記念にオーデションを受けてから役者を辞めることにしました。それと、仲間との最後の思い出に2⼈でオリジナルのワンシーンを書き下ろし演じました。 そのシナリオを陽⼦さんが気に⼊ってくれ、アメリカのサンダンス映画祭に出品しようということになりました。サンダンス映画祭では1等をとると映画を1本とることができます。陽⼦さんのところに住み込みながら3⼈で必死に書き、カサロさんにも⾒てもらいました。
●今までにない経験
サンダンス映画祭で受賞はできませんでしたが、カサロさんからウインズオブゴッドのある役を勧められました。その役は劇中ポイントポイントにしか出ないのですが、全体をつなげる役割です。その役で2年間くらい公演に参加しました。学校の芸術鑑賞の舞台、オーストラリアとニュージーランドでの1ヶ⽉間ツアーなどで演じました。その時は常に役作りのことを考えていました。
今井雅之さんのオリジナルメンバーの頃からの⾳響さんに「その役の演技を何⼈も⾒てきたが、堀⽊さんがハーモニカを吹くシーンではなぜか泣いてしまう」と⾔われました。今までにない経験でした。
その後バイクで⼤事故に遭い、4年くらい⼊退院を繰り返しました。その間にうちの会社が傾き、タイミングだなと思いました。社⻑から「シール印刷を⼿伝え」と⾔われ、27 歳の時に⽵内紙器の社員になりました。
堀⽊淳⼀さんのインタビューを3回に分けてご紹介しました。材料を作る⼈、それを加⼯する⼈、注⽂する⼈、実際に使う⼈、といろいろな⽴場の⼈が納得した商品を作っていくという信念を語っていただきました。
その礎には役者時代の経験が⽣かされているのだと感じ、懸命に取り組んだ経験が真剣なものづくり、作る⼈と買う⼈双⽅に意味のあるものづくりにつながっていくのだと感じました。
インタビュー:会社まるごとギャラリー広報⽀援 天野浩⼦
- ⽵内紙器製作所 専務取締役の堀⽊淳⼀さんにインタビュー①
堀⽊さんはたくさんのサンプルの箱を⾒せてくれながらお話ししてくださいました。 - ⽵内紙器製作所 専務取締役の堀⽊淳⼀さんにインタビュー②
箱は気持ちを伝えるツールになると気づいた堀⽊さん。今回は「ものづくり」にかける想いを語っていただきました。 - ⽵内紙器製作所 専務取締役の堀⽊淳⼀さんにインタビュー③
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